ワインバイヤー必見|貿易ノウハウ|ワイン輸入契約
ワインの輸入をする時に、海外のワイナリーまたは輸出社と契約を結びます。その契約にはいくつかの種類、パターンがあり、最も特殊なのがオープンマーケット。これはボルドーワイン業界のなかでも格付けされたワインに古くから見られる慣習化された取引形態です。
ワイン商:輸入業者=N:N
例えばシャトーラフィットロートシルトやシャトーカロンセギュールなど、ボルドーメドックの1855年に格付けされた1~5級までのシャトーや、サンテミリオンやポムロール、ペサックレオニャンの格付けされたシャトー(ワイナリー)は直接輸出業務をしません。各シャトーはおかかえのワイン商が数社いて、そのワイン商達がシャトーに変わって輸出の窓口となります。(厳密にはシャトーとワイン商の間にはクルチエと呼ばれる仲介人を通してのやりとりとなる。)ワイン商が各国の輸入業者へ販売する、この関係性はN:N、つまり同じワイン銘柄を複数のワイン商が複数の輸入業者に売る、輸入業者は複数のワイン商から同じワイン銘柄を変える、という仕組みです。これをオープンマーケットと呼ぶのです。
株式市場に似ている 需要と供給で価格が変動
株式市場の売買取引は、どこの証券会社から株を買うかは自由に選べます。証券会社も複数の顧客に株の銘柄を売ります。人気のある株銘柄価格が上昇し、人気がないとさほど高値にはならない。証券会社によって手数料が違う。ワインのオープンマーケットでも同じ現象がおきます。ワインの銘柄の評判があがると、世界中から需要がたかまり買いの注文がはいる、それを察知すると価格を上げる。また、輸入業者は複数のワイン商に「同じ銘柄の買いのオッファー」をいれ、価格比較をしてみたい、この場合もシャトー側は需要が高まったと判断し、価格が上昇してしまうのです。なので手当たり次第のワイン商に買いのオッファーをいれるのは得策ではありません。
格付けシャトー達も、セカンドラベルや格付けされてないプチシャトーも造っています。このワインも格付けはないが、オープンマーケット式で取引することもよくあります。また、まったく格付けされていないが需要が高まり、さらなる駆け引きをしたいシャトーはオープンマーケットに切替てくる。いい例がシャトー・モンペラ。マンガで大プレイクし、オープンマーケットにしました。さてこれが吉と出るか凶とでるか、そこはまた別に書きますね。
ありがちな失敗
オープンマーケットとは、「誰にでも売れて、誰からでも買える」取引。新人輸入業者が手っ取り早く始めることもよくあります。しかしこの仕組みをわかっていないと、値段をつりあげた買い物をしてしまったり、ワイン商が二重、三重に仲介していて手数料があがっていたことに気づかなかったり、実はとても難しい。例えばボルドーのワイン商がスイスのワイン商に売り、そこからボルドーの中小規模のワイン商が買い、それを日本に提案してくる、などザラにあるのです。
誰からでも買えるからこそ、’誰から買うか’が非常に重要になっていくわけです。
私が商社時代は、少しでも仲介手数料を少なくしたいと思い自腹と有給でボルドーに足を運び、この仕組みと流れを追求したものでした。4年はかかりましたかね、、、この伝統ある格付けボルドーは本当に特殊です。貴族取引の名残もあるのでしょう。
4年もかける時間も費用もない、という輸入業者へのコンサルティングも承っています。